アクアリウムの天敵!気を付けたい魚の病気とトラブル
日々の疲れを癒してくれる美しいアクアリウム、そんなアクアリウムにとって大敵ともいえるのが『熱帯魚の病気』の存在です。魚とはいえ生き物を飼っている以上、病気や寿命といった問題は避けて通れないトラブルでしょう。
折角家に向かい入れたのですから、きちんと寿命で亡くなるまで健康に面倒を見てあげたいですよね。しかしそんな思いとは裏腹に、どんなに水槽の管理に気を使っていても、ある日突然熱帯魚が体調を崩してしまう事だってあります。
また病気の中には一目見てそれと気づくものもあれば、発見し難い厄介なものまで様々です。折角水槽に迎えたのに、病気に罹ってしまい、気づいた時にはもう手遅れ、なんて事になったら悲しいですよね。
そこで今回は、熱帯魚が罹りやすい病気や起きやすいトラブルと、その対策法をご紹介していきたいと思います。
1.白点病は魚の風邪!?
熱帯魚の病気の知識を持っている人であれば、必ずと言っていいほど知っているであろう病気が『白点病』です。白点病は『白点虫』と言う繊毛虫が魚に寄生することで引き起こされる病気で、末期になると熱帯魚の体中に白点が大量に出来ることから白点病と呼ばれています。
白点病は別名を『魚の風邪』と呼ばれるほどよく見られる病気で、淡水魚のみならず海水魚にも発生する病気で有名です。しかし両者では原因となる白点虫の種類が異なり、淡水魚の場合は『ウオノカイセンチュウ』と言う繊毛虫が原因で引き起こされますが、海水魚の場合は『クリプトカリオン・イリタンス』と呼ばれる繊毛虫が原因で起こります。
白点病は自然界にも存在する病気で、野生の魚も罹ります。自然界に置ける白点病は魚にとっては風邪のようなもので、例え罹ってもすぐに回復する場合が殆どです。しかし飼育下に置ける白点病は、原因となる白点虫の天敵が水槽内に存在しないこともあり、水槽内に蔓延しやすくなるのです。
白点病の対策と治療法
白点虫は基本的にどんなに水槽を綺麗にしても無くすことは出来ません。白点虫は『常在菌』と呼ばれる水槽内には必ず存在する菌類の一種で、完全に無くす事はほぼ不可能です。しかし健康な魚は抵抗力がある為、例え白点虫に寄生されても発症には至りません。白点病が発症するのは何らかの原因で弱った魚か、水槽内に異常なほど白点虫が発生した場合の何れかになります。
白点病を予防するのに一番の方法は、何よりも『魚を健康に保つ』事です。上記したように白点病は弱った魚が罹る病気で、この辺りも白点病が『魚の風邪』と呼ばれる所以でしょう。その為には水槽の水を常に清浄に保っておく必要があります。水槽を立ち上げる際はよくよく時間を掛けて慎重に立ち上げ、水替えも定期的に行います。魚の種類にも寄りますが、水槽内の硝化サイクルがきちんと立ち上がっていて水質が良好な水槽であれば、白点病は出難くなるといいます。
もしも白点病に罹ってしまった場合、一般的によく用いられる治療法は『メチレンブルー』や『グリーンF』による『薬浴』です。また白点病の原因となる『ウオノカイセンチュウ』は高水温に弱く、水温が30度になると活動を停止するといいます。水温を上げて白点虫の活動を止め、その間に魚の健康状態の回復を図り白点病を直そうとする人もいます。
2.ズボラ飼育が問題!?エロモナス感染症
エロモナス病は『不治の病』
エロモナス病は『エロモナス菌』と呼ばれる細菌によって引き起こされる病気です。エロモナス菌は白点虫同様に水槽内の『常在菌』と呼ばれる常時存在している細菌ですので、菌そのものを無くすことは非常に難しく、また一度発症すると完治が非常に難しい病気でも知られます。
エロモナス病は非常に進行が早く、発症後数日で魚が死亡してしまう事さえあり得ます。症状としては『呼吸が著しく早まる』『体に鬱血跡が出来る』などが最初に出始め、進行すると鱗がめくれ上がる『松かさ病』や目玉が飛び出す『ポップアイ』などの症状が出てきます。
エロモナス病は『不治の病』と呼ばれるほど完治が難しく、進行も致死率も高い病気ですので、多くの場合は予防に力を入れた対策が重要になります。
エロモナス病の対策と治療法
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エロモナス病を予防するには『水質の清浄化』と『魚にストレスを与えない』事が重要です。
エロモナス病は水槽や底砂の汚れが原因で発症することが多く、水槽の管理をしっかり行うことが予防の第一歩です。また白点病と同様に、弱った魚ほど発症しやすくなりますので、魚の健康状態にも気を付けるようにしましょう。
一度エロモナス病に罹ったら早期の治療が鍵になります。水替えは元より水槽やろ過装置の掃除も行い、水質浄化に努めます。それと同時に薬浴や塩浴を行うことも効果的です。症状が落ち着いた後も小まめな水替えや掃除で水槽を清潔に保ち、症状が悪化しないようにして下さい。
3.自家採集家は寄生虫に気を付けて!
採集魚は病気に掛かりやすい
最近ではペットショップで熱帯魚を購入するのではなく、自分で川や海に採集をしに行く『採集家』が多くなって来ています。自らの手で採集した魚ならば愛着もあり、特に子供のいる人には遊びがてら採集に行くのも良いかもしれません。しかし自ら採集した魚は、ペットショップで購入した魚に比べると病気になりやすい傾向があります。
ペットショップの魚は販売前に『トリートメント』と呼ばれる菌や寄生虫を駆除する手順を踏んでから、販売されているものが殆どです。対して採集魚は自然界から持ち帰った野生の魚です。当然のことながら自然界に存在する菌や寄生虫などを保持している可能性は高いです。採集した魚をそのまま水槽に入れてしまうと、魚に付いていた菌や寄生虫も一緒に水槽内に持ち込んでしまう危険性が高くなります。
また採集魚は網で追い回され、今までとは全く異なる『水槽』という環境に入れられます。突然の環境の変化による大きなストレスと、水槽に持ち込んだ細菌のダブルパンチで病気に罹りやすくなるという訳です。
採集魚の病気対策
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上記したように採集魚は病気に罹りやすく、また菌や寄生虫を水槽に持ち込んでしまう可能性が高いので、まず初めに『トリートメント』をする事をお勧めします。
採集してきた魚を、新しく作った飼育水が入った容器に入れ、エアレーションとヒーター等で環境を整えます。そうしたら必要に応じて薬を入れ、2~3日そのままにして置きます。トリートメントの期間は個人の采配によるところが大きいため、長い人ですと数週間もトリートメントを行う人もいますが、その場合はこまめに水替えを行う方が良いでしょう。
また採集した魚が海水魚の場合、『淡水浴』をするだけでも寄生虫や菌を取り除く効果があります。
4.水槽内での『スクールカースト』
『スクールカースト』という言葉を聞いた事があるでしょうか。スクールカーストとは学校のクラス内に置いて自然に発生する上下関係をカースト制になぞらえたものです。実は水槽内においてもこの『スクールカースト』のような上下関係や力関係が発生します。またその力関係によってトラブルが生じることもよくあります。
水槽は自然の海や川とは違い、限られた狭い空間です。その狭い空間で違う種類の魚を沢山飼えば、当然の事ですが縄張り争い等のトラブルも発生していきます。そうしていると魚たちの間で力の強さなどによって上下関係が生まれ、強い魚は弱い魚を虐めたり、弱い魚は苛めやエサが上手く取れないことが原因で、最悪の場合死亡することもあります。
水槽内で発生する『スクールカースト』で、上位になり易い魚は主に『スズメダイ』などの気が強い魚か大型魚が多く、逆に小型魚や気の弱い魚は下位になりやすくなります。
水槽内の『スクールカースト』対策
水槽内に発生した『スクールカースト』は放っておくと弱い魚が殺されてしまう事も多く、下手をすると水槽の魚が一匹になるまで殺し合いが起こる事さえあります。
こういった場合に一番簡単で確実な方法は『魚の隔離』です。虐められている魚を市販の隔離ケース等に入れてしまえば接触することも出来ないので、当然虐めも無くなります。
他にも水槽のレイアウトを変更するのも一つの手です。レイアウトが大きく変わるという事は、環境が変わるということです。それに伴って魚たちの力関係が変わったり揺らぐことはよくあります。
若しくは水槽の魚を予め『同じ位の強さの魚』にするか、魚の数や比率を変えるのも効果がある方法です。
5.その他気を付けるべき病気
その他気を付けるべき病気としては以下が挙げられます。
尾腐れ病
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魚の尾びれが解けて無くなっていく病気です。『カラムナリ菌』と呼ばれる常在菌が原因で、感染する場所によって病名が異なるのが特徴です。感染力が強いため、罹った魚は早急にする必要があります。初期症状であれば塩浴で完治することもあります。
転覆病
その名の通り、魚がお腹を見せて転覆してしまう病気のことを指します。転覆病は浮袋の不調に酔って起こる症状で、転覆病そのもので魚が死亡するケースは少ないですが、炎症や感染症のリスクが高まります。治療はかなり難しく、絶食と塩浴を根気よく行い、長期治療に臨む必要があります。
傷からの感染症
特別何かの病気に罹っていなくても、魚同士の諍いや体を石にぶつけるなどして怪我をした場合も注意が必要です。水槽の中には多数の細菌が存在していて、傷口から細菌が侵入し感染症を引き起こす事もあります。感染症を起こしてしまったら、海水魚の場合は淡水浴で、淡水魚の場合は塩浴を行うと効果的です。
6.まとめ
以上、熱帯魚が罹りやすい病気や起きやすいトラブルとその対処法をご紹介してきましたが、この他にも熱帯魚の脅威になる病気やトラブルは数多くあります。この様に書いてしまうとアクアリウムは面倒くさい、と思ってしまう方もいるかもしれませんが、そんな事はありません。
種類にもよりますが、多くの病気は水質の悪化や急激な環境変化、多数飼いによるストレスよって引き起こされる場合が殆どです。日々綺麗で安定した水質を保ち、ストレスの少ない環境を用意してあげれば、そこまで病気を心配する必要は無いと言っていいでしょう。
どうぞ貴方のペットが、末永く健康で長生きできますように。
※本記事内のflickr画像につきましては、flickrの埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。
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