2017 05/31
レイアウト

宝石の名の付いた熱帯魚たち。水草レイアウト・緑の水景と体色のマッチングは?

1. ずばり、そのまま 「ジュエルフィッシュ」

Hemichromis_guttatus_08
まさに宝石として名付けられているのが「ジュエルフィッシュ」。
約10cmほどになるシクリッドで、アフリカ産です。アフリカ産と言っても水質に特別な配慮は必要なく、中性~弱酸性の水で飼育できます。とても丈夫な種類としても有名です。餌も一般的なフレークフードで問題ありません。

体色は赤が鮮烈で、キラキラと光るスポットがチャームポイントです。多種との混泳に関しては、繁殖期にやや性質が荒くなる点を気にかけておけば、基本的に問題ありません。いわゆる「ドワーフシクリッド」よりはほんの少し怒りっぽい、といった程度の認識で大丈夫です。他の魚が適宜隠れられるよう水草、あるいは岩などを配置しておくと良いですね。

・水草レイアウトとの相性

鮮やかな赤は、緑の補色であり、緑の水草レイアウトともかなり良くマッチングします。本種をメインとする方法もありますし、テトラ類などを群泳させた上で、本種ワンペアをアクセントとするような組み合わせもおすすめです。

水草について「アフリカ水景」という部分にこだわるならば、アフリカ産であるアマニア類やアヌビアスをあしらうレイアウトも楽しいもの。色彩的にも、アヌビアスなど深い緑を持つ水草とも良い対称をなします。

強いて注意点を挙げるなら、本種では5-6cmで売られている個体が多いので、10cm程度まで成長する点をきちんとイメージして購入&飼育したい、ということです。

Hemichromis guttatus をジュエルフィッシュ、Hemichromis lifalili をレッドジュエルフィッシュとして売られているケースがありますが、厳密には区分けされていないことも多く、飼育についてなどもほぼ同様です。

2. スマトラ似、しかし輝きが異なる 「ブラックルビー」

"Puntius nigrofasciatus"
「ブラックルビー」は、ポピュラーな「スマトラ」にも似た熱帯魚です。アジア原産、コイ類に属するバルブの仲間です。深い、紅っぽい体色に黒色の縞が上下方向に三本入り、銀色の粉を散りばめたようなウロコの輝きも特徴です。

スマトラとは、性質の荒さ(他魚をつつきがち)もやや似ています。しかしスマトラよりは幾分マイルドといえるので、混泳水槽に入れても大きな問題は起きません。ヒレの長い魚や、極端におとなしい魚との混泳は避けます。

中性~弱酸性の水で容易にキープでき、良く泳ぎ回ります。飼育の簡単さは、入門魚として人気のあるチェリー・バルブなどと同等。バルブ系全般にいえますが、魚が静かに泳ぐ落ち着いた水景を好む人より、元気めの魚が好きな人に向いています。

・水草レイアウトとの相性

どのような水草ともよく合いますが、深めの体色を際だたせるためにパールグラスなど明るめの水草と合わせても良いですし、深めの色合いの水草水景にももちろんマッチします。同じくアジア原産のハイグロフィラ・ローザネルビスのほか、レッドレインキー、エキノドルス各種など赤みのある水草と、「紅」を競わせるような楽しみ方もできます。

3.とにかく良く泳ぐ 「パールダニオ」

画像出典:http://item.rakuten.co.jp

コイ類、ダニオの仲間で、約6cmに成長します。飼育法などはゼブラダニオに準じ、中性~弱酸性の水で飼育でき丈夫です。体色は青~青紫を呈し、確かにパールといえるだけの輝きを持っています。

ダニオ類全般に共通しますが、水槽の表層部をせわしなく泳ぎ回ります。よってレイアウト水槽にパールダニオのみとすると、中層・底層がやや寂しくなることもあります。中層を泳ぐ魚と組み合わせると魅力が出てきます。

パールダニオ自体は温和ですから、コミュニティタンクでの飼育も問題ありません。しかし非常に良く泳ぎますので、おとなしい魚との混泳にはあまり適しません。ハチェットなど同じく上層部を泳ぎおとなしい魚には特にストレスになります。

「表層部を泳ぐので、本種だけでは中層等が寂しくなる」と言っても、それは旧来からの熱帯魚水槽でのイメージです。たとえばテラリウムや変形水槽で水深が浅めな場合などでは、本種のみでも水景として不自然になりません。

上ばかり泳ぐ=「底生の魚の邪魔をしない」との捉え方もできますので、ボティアなどドジョウ(基本的にアジア産である)、あるいはナマズ類を多く飼いたい人にも、タンクメイトとして向いています。

・水草レイアウトとの相性

「明るめ」の体色を持つ魚ですから、ハイグロフィラなど明るめの水草と合わせても良いですし、濃い色の岩などとのコントラストをつくっても面白いかもしれません。

飼育上問題はありませんが、あまりにも表面に水草が茂っている・葉が広がっている・浮いていると本種の遊泳スペースが十分でなくなり、レイアウトの見映えも今一つに。この点を考慮してレイアウトを考えるとより良いでしょう。

4. ナマズだけれど宝石級の輝き 「エメラルドグリーン・コリドラス」

画像出典:http://tomoyuri.blog.so-net.ne.jp

エメラルドグリーン・コリドラスは、学名をブロキス・スプレンデンスと言い、コリドラスに近縁の種類です。姿、生体ともコリドラスに良く似ており、底生のナマズです。

大きさは9cmほどになりますので、購入時に小さくても成長を頭に入れておくことが大切です。飼育は容易で、水温も27-8℃ぐらいまで大丈夫です。コリドラスやナマズ類では22-24℃など低温を好むものもいますが、本種は水質・水温とも特別な工夫が要らず、入門・混泳水槽向けです。

体色は光を反射して文字通りエメラルドグリーンに輝きます。コリドラス類ではステルバイやパンダなど派手な模様のものもいますから、本種は「模様は地味だが、輝くコリドラス」といった捉え方ができます。

・水草レイアウトとの相性

水草とのマッチングでは、「緑と緑」の組み合わせとなります。それもまた保護色のようで、クールで面白いかもしれません。しかし本種メインの水草レイアウトでは、ややコントラストに欠けると思う場合も…?そんなケースでは流木や石を多めにあしらうとエメラルドグリーンコリドラスの体色も映えます。

5. きらめくウロコ+婚姻色の美しさ 「ダイヤモンドテトラ」

Moenkhausia pittieri 3
ダイヤモンドテトラは、きらきらとウロコの輝きが美しいテトラです。少しランダムな感じで、光るスポットが散りばめられているのも魅力。

基本的にはクリア~シルバー系の魚ですが、特に婚姻色を呈した際の輝き+ヒレの伸長がとても美しいとして評判です。5-6cmほどに成長します。

飼育水質は中性~できれば弱酸性の水とします。基本的に丈夫な魚で、ポピュラーなテトラ類を飼育できる人なら問題なくキープできます。温和で他魚との混泳も問題ありません。大人しいですが「臆病」ではないため、テトラ・ラスボラ・バルブ・ドワーフシクリッドなどとスムーズに混泳できます。

一つだけ気にかけたいのが、若干の草食性を持っているという点です。とはいえ、「現実的に水草水槽で問題になるほどではない」とするアクアリストも多く、やや情報が先行している面も。

・水草レイアウトとの相性

体色・体型ともほぼどんな水草ともマッチする魚で、輝きはあるもののさほど「強い」色ではないため、水草レイアウトの魅力を邪魔しません。流木や石・岩とも魅力を引き出し合ってくれます。

6.  静かな泳ぎと貫禄 「パール・グーラミィ」

pareja de trichos leery
10cmほどになるグーラミィが「パール・グーラミィ」です。全身に散りばめられるまさに真珠のようなスポットが単純に目を奪う魚です。非常にエレガントで貫禄もありますが、古くからポピュラーであり、さほど高価ではありません。

グーラミィ類はアジア原産で、多くは止水に近い静かな環境を好みます。本種もその傾向が強いです。この点に少し気を使う(強い水流を与えない)と調子がでますが、一般に飼育容易な品種です。「多くの水草そのものがフィルター兼酸素供給源となり、人為的なろ過やエアレーションは控えめである」といった水槽にも良くマッチし、まさに静かな水景となります。

なかなか迫力のある魚ですが、泳ぎも静かで、「どぎつい」色合いではありません。水草レイアウト水槽に入れても大きく調和が乱れるようなことは少ないでしょう。大きさはあるものの、ラスボラやバルブ、テトラ、グッピーなど小型ポピュラー種との混泳も問題なしです。※シクリッド、あるいはグーラミィの他種とは争う場合があります。水槽が狭い場合、やや慎重に。本種同士での争いは特に問題とはならないものです。

・水草レイアウトとの相性

パール・グーラミィでは泡巣を作って繁殖するのも特徴で、その際は水面の水草が使われます。繁殖を狙う場合は一般にウォータースプライト、マツモ、リシアなどの水草を入れてあげます。表層まで伸びていき繁茂する水草、浮かばせられるもの、あるいはアマゾンフロッグピットなど浮き草の類ですね。パール・グーラミィの繁殖までも考慮してレイアウトするか、あるいは混泳水草レイアウトの一員程度に考えるかは、アクアリスト次第です。

7. 繊細で小柄なカラシン 「ルビーテトラ(レッドテトラ)」

Ember tetra - Hyphessobrycon amandae
「ルビーテトラ」は、レッドテトラ・ファイヤーテトラという名前でも流通していて、体長は2cmほどと非常に小さなカラシンです。

クリアな体色を基本としつつ、わずかに赤みを帯びているのが特徴です。やや跳ねるような泳ぎが特徴ですが、基本的には他の小型テトラ類と似たイメージで飼育&鑑賞できます。グローライトテトラ、プリステラ、ブラックファントムテトラ、ラミーノーズテトラあたりが好きな人に向くかもしれません。それらと混泳させても、本種メインで群れさせてもOKです。

小さいため、小型カラシン専用のフレークフードを用意しておくと、混泳時に餌の取りこぼしが少なくなります。もっとも、臆病な魚ではないため、「大きくて活発に動き回る魚」でなければ混泳もさほど気を使いません。飼育は容易です。

・水草レイアウトとの相性

水草レイアウト水槽には極めてよくマッチする魚といえて、鮮やかすぎない赤み感水草をよく引き立ててくれます。中層を基本に泳ぐのでメイン魚種としても活躍します。「水草育成・鑑賞を主とするけど、やはり少し魚も入れたい。派手すぎない・目立ちすぎない魚が良い」といったアクアリストにも向く魚です。

8. やっぱり熱帯魚の王様? 「ターコイズ・ディスカス」

Discus Turquoise
「熱帯魚の王様といえば?」もちろんアクアリストによって答えは違います。しかし名前があがりそうな魚の一つが「(ターコイズ)ディスカス」でしょう。南米が原産で、改良が重ねられたディスカス各種では、原種とはおよそ異なる美しいブルーを呈します。20cmほどとなります。

ターコイズとはトルコ石のことで、そう高い石ではありません。しかし、この魚は値段もお高め、初心者アクアリストでは「いつかはディスカスを飼ってみたい」と思うことも多いでしょう。

性質も温和であるため、「本種数尾+カーディナルテトラの群泳、パールグラスやリシアを敷き詰める。センタープラントとしてミクロソリウムを使う」などのレイアウトも比較的多く見られます。

ディスカスは、水換え頻度を高めにしなくてはならない、水温をやや高めにする必要がある(28-30℃)など、入門種とは言い難いものです。また育成困難な水草、低温を好む水草などをメインとして考えると、ディスカス向けのメンテナンスとは両立できないケースもあります。

・水草レイアウトとの相性

ディスカス自身が良好な水質と落ち着きのために水草を求めますので、やはり色を含めて、水草レイアウトや流木に合う魚です。深みあるブルーはどんな水草とも合います。

野生の世界をも再現したいとする人では、ブラウン・ディスカスなどの原種を入れたレイアウト水槽もつくりあげて、部屋に2つ置いてみても面白いでしょう。

まとめ

Layout finished. Discus tank with mainly Echinodorus, mangal wood and lava stones at private customer in Portugal. Aquarium size: 120x50x60h cm #FAAO #Aquaflora #Aqvainnova #Aquascaping #planted #aquarium #aquatic #plant #freshwater #plantedtank #aquasc
主な「宝石の名のつく魚」を挙げてみましたが、不思議なことにどれも水草レイアウト水槽、レイアウト水槽各種によく合う魚です。また、最後のディスカスを除いてはどれもが飼育容易というのも不思議。飼育しやすく美しい魚には宝石の名がつくのでしょうか?

どれも名にまけないきらめきを持つ魚たちばかりです。しかし赤系、青系など体色には個性があり、強い色彩を放つものもあれば、色彩は淡いがウロコが光るもの、クリアなイメージを持つものなど体色も様々です。また泳ぐ層、泳ぎ方などにもそれぞれ個性があります。それらが水草アクアリウムとどうマッチするのか?とても奥が深いですね。

好みの出る点としては…?「強い色彩と水草とのコントラストを楽しむ」、「淡め・控えめの色彩と水草を静かに調和させる」かですね。「透明感があり、魚の一部分から緑が透ける」ような状況と、「体色に透明感はない魚」どちらが水草とマッチすると思うかも、アクアリスト次第です。さらに「静かに泳ぐ魚」と、「元気に泳ぎ回る魚」といった動きの要素も絡んできます。

水草に関しても、ロゼットや有茎と言った形の違いのほか、明るい緑のもの、深く濃い緑のもの、葉に模様のあるもの・ないもの、赤みのあるものなどバリエーションがあります。様々な水草を合わせたり、あえて単種で育成したりし、そこに良くマッチングする魚を遊泳させれば、まさに自分だけのレイアウト水槽となります。

本物の「宝石」もまさにそうなのですが、全く同じ外見の個体は存在しないのです。個体差が大きいかは種類によりますが、「この一尾!」と言えるものを見つけられれば、まさにアクアリストにとって宝石。通販などで購入した場合も大切に飼い込むことで、魚のきらめきは個々に増していきます。

マッチングに関しては、必ずしも当初のイメージ通りにならないものでもあります。「魚を飼い込む、水草育成を続ける、変わった組み合わせを試みてみる」これらで思わぬきれいな仕上がりになること、不思議な遷移を見せることも多いです。レイアウトづくりの妙味でしょう。上手く行けばアクアリウム自体が宝石になります。

 

※本記事内のflickr画像につきましては、flickrの埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。

 

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